Plenary Session
多文化共生の学校づくり
横浜市立南吉田小学校は、2025年4月現在、全校児童577人の半数以上(58.5%)が外国籍または外国につながる児童(以下外国籍等児童)で、つながる国や地域は20におよぶグローバル化のすすんだ学校である。学校では、増え続ける外国籍等児童の日本語教育と多文化共生教育に力を入れ、学校教育目標の一つに「多様性を尊重できる子ども」を掲げ「誰一人取り残さない」をモットーに様々な取組を行っている。
Plenary Workshop
海外編入児童の受入れに必要な教職員の連携について
外国籍等児童を受け入れる上で欠かせないのが職員間、支援者間の連携である。子どもの得意不得意を理解し、友達関係や家族関係の悩みを把握し、安心して学校生活を送れる環境づくりをする。そのためには担任と国際教室担当の連携をベースに、支援者との情報共有を大切にしている。心のケアではスクールカウンセラー、家庭生活の悩みやトラブルは、SSWを介して区役所、児童相談所など関係機関と連携して解決に向けて動く。本人の意志と関係なく来日しているケースがあることから、心のケアをしていくことは大切なことである。
Plenary Article
多文化共生の学校づくり
学校概要
横浜市立南吉田小学校は、全校児童577人の58.5%が外国籍または外国につながる児童(外国籍等児童)で、つながる国や地域は20におよぶグローバル化の進んだ学校である。中国籍児童が多数を占めるが、韓国、フィリピン、タイ、ベトナムなどアジアの国々につながる児童や、近年はネパール、イスラム圏からの編入児童も増えている。増え続ける外国籍等児童の日本語教育と多文化共生教育に力を入れ、学校教育目標の一つに「多様性を尊重できる子ども」を掲げ「誰一人取り残さない」をモットーに様々な取組を行っている。
日本語教育
海外編入児童はまず横浜市日本語支援拠点施設「ひまわり」に通い初期日本語指導を受けながら、学校の国際教室でも初期指導を受ける。GIGAスクール構想により、1人1台PCが貸与されてからは、写真や動画、ひらがな、カタカナアプリ、デジタル教科書なども活用して日本語指導を行っている。
多くの児童は半年から1年で初期指導を卒業し、学年の国際教室での指導に移る。この段階で日常会話は概ね分かるようになっているが、学習言語を習得するにはさらに3年から5年ほどかかるという研究もあり、日本語指導を継続していく。
在籍学級では外国語補助指導員や母語支援ボランティア(横浜市教育委員会事業)が教室に入り込みサポートする。
多文化共生教育
本校では「笑顔で結びつなげよう南吉田」を合言葉に、国や言語、文化の違いを超えて認め合える子どもの育成を目指し、様々な取組を行っている。
6か国語のアナウンスで始まる運動会では、民族衣装を着た児童が聖火リレーを行い盛り上げる。運動会はオリンピックの精神を体現しているとして「東京2020 みんなのスポーツフェスティバル」で大会組織委員会から表彰された。
夏休み国際読書会は、各国の講師が来校し多言語で読み聞かせをした後、その国の遊びを紹介する。その他にも、世界の遊びを紹介する集会、二胡教室やK-popダンスなどの催しを通じて、子どもたちのつながる国の言語や文化にふれる機会をもっている。
母語教室も開いている。どの取組も学校だけではなく、PTA、地域協働本部、行政や横浜市国際交流協会が運営するみなみ市民活動・多文化共生ラウンジ、横浜国立大学等との連携で行っている。
保護者、児童を対象に実施している学校評価アンケートでは「国や文化の違いを超えて認め合う気持ちが育っています」という質問に、9割近い保護者が肯定的な回答を寄せている。
Masato Kaneko 金子 正人 (校長 Director)
横浜市立南吉田小学校校長
95年から3年間台北日本人学校勤務。文科省「JSLカリキュラムの開発に係る協力者会議」委員。その後教育委員会事務局やこども青少年局勤務を経て現職。
学校ホームページ
https://www.edu.city.yokohama.lg.jp/school/es/minamiyoshida/