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An Interview with Dr. Miriam Eisenstein Ebsworth

The Role of Genre in TEFL

斉藤洋果 (Hiromi Saito)

Queens College of the City University of New York




質問: 日本では小学校で英語教育が導入され始めましたが、子供に第2言語を教えるのに早すぎるということはありますか?

全ての子供は複数の言語を習得する能力を生まれながらにして持っていますから早すぎるということはありません。第一言語を習得中の時期から教えればそれだけ言語経験が豊かになります。クミンズ (Cummins)によれば第一言語と第二言語の認知能力の発達は相互作用があると言われています。日本語を覚え始め脳の発達の始まった子供に第二言語である英語を学ばせることにより、子供の脳がより言語を吸収しやすくなるのです。私は4歳の幼稚園の時から一貫教育のユダヤ系学校に通いましたが、午前中は生徒達の母国語である英語で全て授業が行われ、午後は第二言語であるヘブライ語で行われました。それが高校時代までずっと続きました。生徒全員が2つの言語で読み書きができるバイリンガルになりました。研究では長期的にはバイリンガル教育は認知能力の柔軟性を高め、高いIQをもたらすことがわかっています。

質問: どういったメソッドが理想と思われますか?

小さい子供は大人のように抽象的に物事を捉えられないので文法事項を暗記させるやり方は適しません。コミュニカティブメソッドが子供の場合何よりも大切です。実際に体験しながら学べる歌や踊り、人形劇等はいいですね。始めは楽しく、だんだん慣れてきたら読み書き能力を伸ばすべきです。セサミストリートも勉強になりますし、文構造を説明したり英語圏の国について読んだり映画をみたり。上級になればインターネットを使って日本人のクラスとネイティブのクラスを結んでE-mailで情報交換をするのも楽しいですね。重要なのは第二言語を媒体として意味のあることをすることです。始めは楽しみの為、慣れたら他人とのコミュニケーションの為に英語を実際に使わせることです。そしてクラシェン (Krashen)の提言するコンプレヘンシブリインプット(=学習者がそれまでに習得した知識よりも少し上のレベルのインプット)が理想です。ロールプレイ、ドラマ等、実際にクリエイティブに英語を使わせること、同時に聞き手にならせる機会をドンドン与えるべきです。

質問: 英語を指導する教師はどのような人が理想ですか?

訓練を受けた英語がネイティブまたはネイティブに近い人が理想です。子供の緊張をやわらげ、楽しくわかりやすく教える、適切なフィードバックを与える、異文化理解のあること。基本的には英語で授業ができることが理想ですが、始めの段階では説明は日本語でもいいと思います。段階的に英語の量は増やすべきです。もし英語があまり得意でない先生が教える場合は、ビデオやカセットテープ等を使ってネイティブの英語を使う必要があります。ただどうしても内容的に浅い授業になってしまうデメリットはありますね。

質問: 子供の英語教育が成功するにはその他に何が必要ですか?

親の役割です。子供が使用している教科書に眼を通したりして、自分の子供が学校でどんなことを習っているのかを知ることは子供の言語教育の支えになります。英語が不得意なら親御さんも一緒に勉強すればいいのです。

質問: ところで先生はプラグマティックス(語用論)についての研究やセミナーを多くしていますが、日本に住む多くの人は外国で暮らすこともなければ英語を母国語とする人と接点のない人もいます。そういう環境においてもプラグマティックスを教える意義はあるのでしょうか?

たとえ外国に行かなくても、私達の心は本や映画、インターネット等の媒体を通じて旅をしています。ですから外国語を使う機会というのは受動的であれ自発的であれ様々な形で頻繁にあるものです。コミュニカティブコンピテンス(言語運用能力)の概念は言語を学ぶ基本的な目的は人とのコミュニケーションにあるという考えのもと発達しました。私達は話し言葉や文章で自分の考えを他人に伝えたい、他人の考えを知りたい、という欲求を持っています。プラグマテッィクスは語彙、構文、音韻等の言葉の形態を捉え、それを分析しながら意味を伝える役目を果たします。感謝の表現やお悔やみの表現、お詫びの表現と軽蔑の表現等、人が伝えたい気持ちを理解し微妙なニュアンスの違いを感じ取る必要があります。その理解なしには話し手の意思は正確には伝わらず、また自身も伝えることはできません。プラグマティックスは構文や語彙を学ぶのと同じくらい重要です。言葉はただ存在しているのではなく、文化的なルールや価値観等が巧妙に絡んで成り立っています。プラグマティックスを教えることは選択でなく、必須なのです。それなくして言語を正しく操ることは不可能です。

質問: では教師は例えばどの国のどの文化のプラグマティックスについて教えるべきでしょうか?

学生の興味にあわせて選べばいいでしょう。ひとつの国あるいは文化について教えたら学生は少なくともプラグマティックスについて理解を示すようになるので、その後は話される地域によって英語の語彙や構文にバリエーションがあるように、プラグマティックスにもバリエーションがあるということがわかってくるようになります。よくアメリカ人ははっきり物を言うと言われますが、それは大きな誤解で英語表現には直接的な言い回しを避ける表現は多々あります。プラグマテッィクスの知識のないまま英語を使うと知らずに相手を傷つけたり怒らせてしまうような誤解も生じます。ですからプラグマティックはひとつの要素として必ず言語学習の中に取り入られるべきです。

質問: 具体的にどのようなメソッドを使えばいいですか?

まず大切なことは状況設定です。誰と誰が話している場面なのか、誰から誰に宛てた手紙なのか、状況や目的、発話者の人間関係等を明確にし、適切な英語表現を学ぶことができるように設定します。敬語の使い方等社会ルールに則った話し方は、子供達が日本語を学ぶときには当然教えていることですよね。英語でも同じです。映画やテレビ番組の一部を見て話し合ったり、ある困難な状況をうまく切り抜けるにはどう言ったらいいか、と言った様々な場面を想定してロールプレイ等を使い表現方法を探っていく方法が有効です。

もうひとつ、プラグマティックスは文化的背景に左右される部分が多く、個人の人格形成に影響を与える為、他の文化のプラグマティックスを学ぶことに抵抗をもたれる方がいますが、英語を話すときに日本語とは違った語順で話したり違う発音を使うのが当然であるように、コミュニケーションの目的にあったプラグマティックスを使えなければ意味がありません。他国の状況に適したプラグマティックスを使うことは日本人としての人格を変えるのではなく、状況に合わせて表現方法を変えるというだけのことで決してマイナス要因ではないのです。そしてプラグマティックスは小学生の英語教育にも絶対に取り入れられるべきです。

ありがとうございました。

References

Cummins, J., & Swain, M. (1986). Bilingualism in education. London: Longman.<br> Krashen, S. D. (1985). The Input Hypothesis: Issues and implications. New York: Longman.



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